Photo: Vera Livchak / Getty Images

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アトランティック(米国)

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Text by Russell Shaw

子供が学業など何らかの壁にぶち当たったとき、子供の好きなことを一時的にでも取り上げ、目の前の課題に集中させる親は少なくない。しかし、このやり方は長期的にも短期的にも、あまり良い結果をもたらさないという。子供が自分の力で壁を乗り越えられるようにするには、親はどうすればよいのだろうか。

「成績が上がるまで、◯◯を休ませるべき?」


心配そうな表情を浮かべた母親が、私のオフィスのソファに座っている。最近、夫が解雇され、家庭内に緊張が走り、15歳になる息子の成績も下がりはじめたという。

「息子はレスリングにしか関心がないみたいで」と彼女は打ち明ける。早朝5時に起きて練習に行くのに、宿題には手をつけない。「成績が上がるまで、練習を休ませようかと考えているんです」

その気持ちは痛いほどよくわかる。私自身、教育者として、また3人の子を持つ親として、この30年間、同じような会話を幾度となく交わしてきたからだ。

子供が壁にぶち当たると、親はどうしていいかわからず、無力感に陥りがちになる。だが、子育ての経験と、レジリエンスに関する多くの研究から、私は貴重な教訓を学んできた。

子供が期待に応えてくれないとき、最も大切にしているものを取り上げて罰を与えても、やる気を引き出せはしないということだ。

「弱点を克服する子育て」と「長所を生かす子育て」


子育てには正解などなく、試行錯誤の連続である。現代の子育て環境は、「成功しなければ」という不安が常につきまとい、親は子供の長所よりも短所に目を向けがちだ。

成績表を渡すと、真っ先に最も成績が悪い科目に注目する親もいる。その手の親たちは弱点克服のため、すぐさま家庭教師を雇ったり、新しい勉強法を無理強いしたりする。子供の成功を妨げかねない弱点を取り除こうと、良かれと思ってそうするのだ。

しかし、何十年にもわたる研究結果によれば、有能な若者を育てる鍵は、弱点の克服ではなく、むしろ長所を見つけ、育み、それを足がかりに能力を伸ばしていくことにある。言い換えるなら、それは児童発達の専門家が「能力の島」と呼ぶものを見つけることだ。
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